「佐々木宏子 青のあいだ」シンポジウム


展覧会「佐々木宏子 青のあいだ」 10月5日(火)─10月10日(日) 世田谷美術館・区民ギャラリー http://www.sasakihirokofoundation.jp/
トーク「日本美術の中の青のあいだ」10月8日(金)14:00〜 世田谷美術館2F講義室 パネリスト=小金沢智(美術評論家世田谷美術館学芸員)×楠見清(美術評論家/元『美術手帖』編集長)
トーク「無意識的な自然と意識的なもの」10月9日(土)14:00〜 世田谷美術館2F講義室 パネリスト=建畠晢国立国際美術館館長)×岡部あおみ(美術評論家/武蔵野美術大学教授)×楠見清(美術評論家/元『美術手帖』編集長)
各日ともトークの前に13:00〜ビデオ「佐々木宏子 青のあいだ Unconscious nature and Conscious Object」の上映あり



佐々木宏子さんの新作群はコバルトブルーの柔らかな積層からなる色味に新鮮な風合いが生まれていた。青の絵画は年々技法的にも磨きがかかるが、15年以上前に初めて見たときから一貫して変わらない精神性に貫かれている。画家が「青の精神」と呼ぶものについて知るには彼女自身の新刊『現代美術と禅』を紐解くのが最善の道といえる。


今回の展覧会の図録には拙稿(「色をもって色を超える──さらに『青の画家』を超えて」)を寄せ、さらにシンポジウムではパネリストと司会を務めた。


小金沢さんとは日本美術史と佐々木宏子の作品との接点を語る。牧谿宗達若冲などに見られる「間」や「余白」による「無」や「無限」の表現を、日本美術からマンガやアニメにまで共通して流れる日本独自の二次元表現の研究からスーパーフラット絵画を生み出した村上隆や、さらには現代陶芸の世界で縄文やヒップホップのアブストラクトなリズムを陶器全体に刻む金理有(写真上のスライド)といった若手作家までを結ぶことで、佐々木さんの絵画のもつ「無」と「無限」の枠組みをあえて大胆かつSF的に拡げてみせた。
本来的には佐々木の作品は西洋的な現代絵画の問題を現代音楽(ピエール・ブーレーズブライアン・イーノ)と同時代の問題として禅的な回答を示したものといえるが、話し終えて気が付いたのは2000年代に海外にも浸透したOTAKU文化は、20世紀半ばにZENの思想が文化的に果たした役割に代わるものなのではないかということ。ここから先はまた別の機会に話してみたい。



二日目に僕が用意したスライドはフォンタナの《空間概念》、イヴ・クライン、アニッシュ・カプーア、ジェームズ・タレルデレク・ジャーマンマーク・ロスコ、ブリジット・ライリーなどで、これら欧米の現代絵画に見られるモノクロームやオールオーバー、女性作家といった佐々木さんの絵画に共通するトピックを建畠さんと岡部さんとともに検証することを目的としたもの。
さらに岡部さんからは阪神淡路大震災後に企画したジョルジュ・ルース阪神アートプロジェクトなどの実例から、青の色彩が人間にもたらす精神的な効果やイメージについてもレクチャーしていただいた。