ビースティ・ボーイズとアメリカ西海岸カルト映像文化再訪

ビースティ・ボーイズ「ホット・ソース・コミッティー・パート2」がらみのカバージャケット・アートワークと映像について『クロスビート』2011年10月号に書きました。(p.172「ビースティ・ボーイズが繰り出す映像とグラフィックの戦線拡大中」、連載「アートワーカホリックアノニマス」)
記事では紙幅が足りずに書ききれないことがあったので、話題と映像ソースを増量してここに記しておく。批評的な言葉は足りませんが、それはぜひ雑誌のほうを読んでください。


まず最初にこちらは2年前に「ホット・ソース・コミッティー・パート1」として発売告知されていた際のジャケット。結局お蔵入りになったまま、誰の作品かは不明。

MCAのがん闘病による発売延期の後、今年発売された「ホット・ソース・コミッティー・パート2」。


パッケージを開封した展開写真。
アートディレクション/イラストレーションはマイク・ミルズによる。ミルズがこれまで手がけてきたジャケ&グラフィック、一言で言うなら“アヴァンかわいい”ですよね。



ミルズとArya Senboutaraj(読み方不明、LA在住のアジア系映像作家)によるオノ・ヨーコのPV。こうしてみると現代の“アヴァンかわいい”の始祖はオノ・ヨーコなのかもしれない。


コラム中で触れたミルズ監督による映画「ビギナーズ」(2011、日本未公開)はこれ。

父子関係やがん闘病は今年の映画のトレンドなのか(「ツリー・オブ・ライフ」、「ビューティフル」etc.いつかじっくり見比べてみたいところではあるが)、ユアン・マクレガー演じる主人公はミルズ本人であるらしく「ホット・ソース・コミッティー・パート2」の内ジャケにも収められているこのドゥローイングを描くシーンがある模様。映画は未見なので詳述は先に送る。


今さらながら「ファイト・フォー・ユア・ライト・リヴィジテッド」(2011)日本語字幕版。キャスティングも演出も最高!

元ネタは1986年のこれ。ロバート・ゼメキス監督の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985)とともにアメリカの映像がやんちゃで開放感に溢れていた時代(その雰囲気はジョン・ヒューズ監督の青春映画などにもふんだんに象徴されていた)。

このPVの監督はリック・メネロ(後に1988年「タファー・ザン・レザー」を撮る)とアダム・ダビン(1992年メタリカドキュメンタリー映画を撮る)。ヒップホップ映画とメタル映画の二大監督の原点であり、パイ投げシーンは「博士の異常な愛情」の幻のラストシーンのリヴィジテッドでもある。


そして、待望のスパイク・ジョーンズによるアクション・フィギュアを使った新PVがいま公開されている。これも最高!

お馬鹿人形活劇。笑いどころ満載なのだが、これは秘かにトッド・ヘインズ監督がバービー人形を使ってカーペンターズの暗黒面を描いた異色映画「Superstar: The Karen Carpenter Story」(1987)のオマージュなのだと受けとめた。

当初からカルト・ムーヴィーとして名高く、僕は英語のヴィデオのコピーのコピー(のそのまたコピー)くらいのVHSを知人から個人的に楽しむために頂戴して見ていた。でも今やネット上で即座に見られる。

Google Videoには43分全編がそのまま上がっているがいつまであるかは不明

僕がカーペンターズやバービーが好きだというと意外な顔をする人もいるが、それは1970年代のアメリカの光と影への憧憬のようなもので、トッド・ヘインズの映画は1994年のトリビュート盤『If I were Carpenter』とともに、なぜ我々がそれらに魅かれるのかの理由を視覚化したものだといえる。

瞳が大きく描かれたジャケのイラストも、表題『もし私がカーペンターだったなら』も、悲劇のスーパースターへの倒錯感をよく表している。1970年代文化の90年代的な解析アプローチとして狂おしいまでに愛おしい傑作。


1970年代とバービーと言えば、これはバービー・コレクターズ・シリーズの最新の商品。ファラ・フォーセット人形

ファラ・フォーセットは2009年6月25日マイケル・ジャクソンと同日に亡くなった。人形のモデルとなっているのは1976年に販売されたこのポスター。

ブルース・マックブルーム撮影のこのポスターの販売枚数は500万枚とも800万枚以上とも言われるが、赤い水着のこのポスターでファラはこの時代のセックス・シンボルとなった。最近、写真家からスミソニアンに寄贈されたというニュースもある。