3.11以後のアート

生きてる実感Vol.3緊急企画チャリティートークイベント「3.11以後のいま確かなことは今回我々がやろうとしていることはタイトルひとつにまとまらないほど深刻で複雑で3.11 以前のように気の利いたつぶやきで140字以内にまとめることすら難しくもっと端的に言うならツイッターでは済まないからこそみんなで集まり対話を通じてこれからのアートとアーティストのありかたについて考えそこから見えてきたものを出演者と観客それぞれが持ち帰って明日からの生き方に反映させることで少しでも世の中を良くしていきたいという思いだ」(以上が今回我々が話し合って考えたトークイベントのタイトルである)。3.11以後のいま私たちは3.11以前に用意していたものごとや考え方がもう役に立たないことに気づいて愕然とさせられている。悔しいことに3.11以前に我々がライヴ・パフォーマンスを通じて現前化することで確かめようとしていた「生きてる実感」は3.11以後のいま人びとが生きるために必要とするものには〈何か〉足りない。多くの人命を奪った地震津波は家や車や生活や思い出のすべてだけではなく私たちの心の中にあったさまざまなものを破壊しそこにあった〈何か〉大切なものをも一気に流し去ってしまったのではないか。被災地で物資不足が叫ばれるのと同様にいま誰もが心の中で得体が知れず言葉にもならない悲鳴をあげている。芸術という精神的な活動領域の比重が大きいアーティストやアートファンであればそのダメージはなおさら大きい。さらに原発事故による放射能汚染が自然界や人体や人間の内面にまで暗い影を拡げるいま3.11以後の世界を生きる私たちはもはや「生きてる実感」どころか「生きた心地」すら奪われているのではないか。被災地にフィジカル(物質的)な救援物資が届けられるようにメンタル(精神的)な被災に対しても〈何か〉が送り届けられる必要がある。3.11以後のアートは3.11以前のアートとは違う〈何か〉に生まれ変わらなければならない。その〈何か〉が一体〈何なのか〉をみんなに見せることが3.11以後のアーティストの仕事となる。語れアーティスト。集えこの文章を読んでくれたあなた。届け強く、生きてる実感。[生きてる実感Vol.3緊急企画チャリティートークイベント司会・楠見清]


今回の催しは海野貴彦と遠藤一郎によってこれまで行われてきたライヴ・パフォーマンス・イヴェントのシリーズ第3弾「生きてる実感Vol.3──全てを突き抜けろ」として企画され、総勢7名の表現者たちによって行われる予定だった。もともと僕は昨年末に海野貴彦からこのイヴェントのフライヤーへの寄稿を依頼され、刷り上がったフライヤーには別の文章(「7つの太陽がぼくらを照らす日」)が掲載されていたのだが、3.11の東北関東大震災を経てその文章が日ごとしぼんでいくことに気づかされ、言葉にならない(しいていうなら沈鬱な)思いをじっと抱えていた。
何事もない平坦な日常の中で発せられた「オマエには生きている実感はあるか」という問いは、多くの犠牲者と被災者を出しいまだ放射能の不安で明日の見えない非日常的な状況下ではなんと空しい響きでしかないことか。そんなこともあって今回まずは主催者たちによる開催か延期か自粛かといった討議から急きょトークイヴェントとして再編開催されることとなった「生きてる実感Vol.3」に新たに寄せた文章が上のものである。僕個人は3.11以後必要とされる新しい価値観やそれによって構築される新しい社会像、さらにそこでの芸術のはたらきについていままさに考え始めたところなので、まだ整理しきれていない部分も多いが、続きは会場で、若きアーティストたちとの対話を通じて会場のみなさんといっしょに考えてみたい。


生きてる実感Vol.3緊急企画チャリティートークイベント
◎日時:2011年3月26日(土)開場:17:30/開演:18:30-20:30
◎パネラー:遠藤一郎、海野貴彦、金理有、桑田卓郎、信長、平井友紀、横山玄太郎(予定)、MC:楠見清
◎入場無料(ドリンク1オーダーをお願いします。会場には東北関東大震災救援のための募金箱を設置します。具体的な使途に関してはその場でみなさんからのご意見を募り是非トークの議題のひとつとしたいと思います)
◎会場:M Event space & bar 東京都渋谷区恵比寿西1-33-18コート代官山B1 Tel:03-6416-1739 東急東横線代官山駅下車徒歩3分 http://www.m-event-bar.com/
◎協賛:ターナー株式会社
ツイッターアカウント: @ikiterujikkan http://.com/ikiterujikkan
Ustreamライブ中継:http://www.ustream.tv/channel/生きてる実感
電力、交通、原子力発電所の状況、不便な点が多々ございますが当日のお越しを関係者一同お待ちしております[主催者]