Krazy!展ニューヨーク・リポート
日本からコキュレーターとして参画し、バンクーバー美術館からニューヨークのジャパン・ソサエティーに巡回した「Krazy!」展。先日終了してしまいましたが、4月に観てきたときの展示の模様を写真でご案内しましょう。
ジャパン・ソサエティーは国連本部ビルのすぐ近くにある。1907年設立以来101年に渡って日本文化をアメリカに紹介してきた。
バンクーバー美術館のオリジナルの展覧会は日米欧の作家から構成されていたが、NY巡回展は会場のコンセプトと規模の理由から日本人作家だけの選抜展に。サブタイトルは《The Delirious World of Anime + Comics + Video Games + Art》から《The Delirious World of Anime + Manga + Video Games》にマイナーチェンジされている。
1Fエントランス。竹林をイメージした中庭に展覧会タイトルの立体デコレーションが。
階段で2Fに上がる。
左手にミュージアムショップ。今回の展覧会のためスタッフが東京で買い付けてきたお宝の数かずが販売されている。
アニメやマンガによく出てくるが外国人には馴染みのない日本食をテーマにしたレシピ本。たとえば「みそ汁」の作り方が英語とマンガで解説されている。
まずはマンガの展示コーナー。入口の横山裕一の絵の脇に立っている巨漢の監視員との2ショットが気になってパチリ。
横山裕一『ニュー土木』の展示。
安野モヨコ『さくらん』の展示。
松本大洋『鉄コン筋クリート』。日本語版と英語版、そしてアニメ版をマルチに展示。
江口寿史『ストップ!ひばりくん!!』
小田島等『無FOR SALE』。パソコンで作画する作家の場合、いわゆる「原画」原稿が存在しないため、ラフスケッチ(ほぼネーム)を提供したところ、それが逆に珍しがられたのかずらりと展示された。
岡崎能士「アフロ・サムライ」。同人誌『ノウノウハウ』に掲載された小さな作品が、サミュエル・L・ジャクソンに映画化権を買われ(ただし映画化は未定)、ゴンゾによってアニメ化までされた。北米での浸透力強し。
ここからはゲームの展示コーナー。
実際にプレイできる展示には昔のインベーダーの筐体も。
アニメのコーナー。
マルチスクリーンに「アキラ」、「攻殻機動隊」、「雲のむこう、約束の場所」など出品作家の代表作の一部シーンがループ上映されている映像インスタレーション。禅庭を模した空間配置で、縁側に見立てた手前側に座してスクリーンと対峙する関係性が成功している。アトリエ・ワンの会場構成はうまい。21世紀のNYでこんな展示がされることを、1988年東京・池袋の映画館で「アキラ」を観た21年前の自分に教えてあげたら信じてもらえるだろうか。
ちょうど団体で見学に来たNY市内の高校生。ディレクターのアナウンスで日本から来たゲストがいると紹介されたら、いま日本では何がいちばん人気なのか、これから何が盛り上がるのか、最新情報を求める質問が矢継ぎ早に。かなり熱い生徒が、日本と同じくらいの比率でいる。
ちなみに今回はオープニングに併せてコスプレ・パーティーも催されるなど、これまでジャパン・ソサエティーに縁のなかった若者たちが連日詰めかけ、館の観客動員記録が塗り替えられたとのこと。
アトリエ・ワンの家具彫刻「マンガ・ポッド」。はじめて見てからずいぶん経つがこんなに長く、随所で活躍することになろうとは……これまた感無量。
ジャパン・ソサエティーでは日本映画の上映会も行われている。なんとポスターを見ると「男はつらいよ」特集。全作品を日替わりで上映。ニューヨークで山田洋次の映画を観たら……たぶん小津安二郎に近いものを感じるのではないか(あるいは、寅さんが理解できれば「こち亀」もわかるだろうし)。山田洋次特集上映会はNYだけでなく今後ヨーロッパの各都市にも波及し何らかのエフェクトをもたらすかもしれない、そんな予感が。