災害とデザイン、そしてフラー


『リアルデザイン』2011年6月号BOOK欄(p.24)に「災害に対してデザインができること──そして、デザイナーと社会との新しい関係性のデザインへ」を寄稿しました。
『世界を変えるデザイン』(英治出版)はアメリカでの展覧会が日本にも巡回して話題になった本だが、もう一冊の『震災のためにデザインは何が可能か』(NTT出版)は一昨年刊行されていた隠れた良書。避難所での生活の諸問題をデザイン・プロダクトとデザイン的思考で解決するというアプローチがすぐれている。デザインはかくあるべし。

掲載誌では残念なことにDTPの流し込みミスがあって、下段コラム右の本の紹介が別の本の紹介になってしまっている。正しいテキストを以下公開しておこう。


宇宙船地球号操縦マニュアル』
R・バックミンスター・フラー
芹沢高志訳

原発事故の深刻な問題は今後エコロジーからエネルギー問題へと波紋を拡げるだろう。危機的状況のいまだからこそ1963年に書かれたこの名著を。全地球的視点で資源活用のシステムをデザインするという南北問題の解決策は『世界を変えるデザイン』の発想の原点といえる。(ちくま学芸文庫、945円)

危機的状況下に求められるデザインを考えたとき、やはりフラーにたどり着くというのは僕にとってあらためて重要な結論。震災と津波の被災地、原発周辺の警戒区域、避難所と仮設住宅を、非被災地が経済的に、エネルギー的にいかに効率よくバックアップしていくかという問題は、フラーの提唱にそのまま重ねあわせられる。いわば私たちは損傷を受けた「日本号」の乗組員として傾いた船をいかに立て直して操縦していくかという問題に直面している。


Real Design (リアル・デザイン) 2011年 06月号 [雑誌]

Real Design (リアル・デザイン) 2011年 06月号 [雑誌]